アマリリス 5
こんなものなの…?
挨拶する、ってこんなものなの?
確かに、挨拶できるようになって、すごく嬉しい。
だけど…
『俺はそれ以上の関係じゃないんだぞ』って主張されてるみたいで、少し悲しくなってしまった。
話したことがなかったときにはなかった壁ができたみたいで…
それからしばらくは何の進展もなく、むしろ、お互いに顔は知ってるんだけど、
知り合いでもない、みたいな微妙な関係になってしまった。
これも全部さくらの極度のオクテのせいだ、とさくら自身は思い込んでいた。
もし、笑顔で笑いかけたりできれば、こんな関係にはならずに、話もできたかもしれないのに…
うあぁ〜…
枕に顔を埋めて悶えてみる。
もちろん、そんなことはなんの解決策にもならないのだが。
そんな風にボンヤリした気分で、気づくともう朝になっていた。
重い足取りで、さくらはいつも通りバス停へ向かう。
すると何故か、そこには蓮がいた。
「おはよう。」
蓮がさくらを見てすぐに挨拶する。
「お、おはよぅ!」
さくらは瞬く間に真っ赤になる。
ど、どうして??
いつもこのバス停でバスに乗ってたっけ!?
「いつもはこの一個前のバス停でバスに乗るんだけど、今日は一駅分歩いてきたんだ。」
「え…?」
「早く目が覚めたから。」
「そっか…」
やっぱり上手く喋れない。
何か…面白いこと話さなきゃ…
「ほ、本!!」
「え?」
「本、読んでたでしょ。」
「あ、あぁ…」
心なしか、その時、蓮の顔が赤くなったような気がした。
「私、同じ本持ってるの。」
「そうなんだ…奇遇だね。」
「うん。」
「…………」
話終わっちゃった!?
「バスの中だとあんまり話できないよね。」
「え・・・あ、うんっ!!話せないね。」
「一回普通に話してみたかったんだ。」
「わ、私も!!」
さくらは気づくと笑顔になっていた。
蓮も笑顔。
でも、蓮の顔を直視することはできなかった。
恥ずかしくて…
だから、蓮がどんな顔をしているのか、よく分からなかった。
「バス、来たね。」
「うん。」
「じゃあ、また。」
そう言って蓮はバスに乗った。
さくらもバスに乗り、席についた。
人生で初めて男の子とまともに話せた!!
さくらは嬉しくなって思わず一人でにやけていると、後ろから声が聞こえた。
「おい、蓮〜。お前なんか顔がにやついてっけどいいことあった!?
あ、もしかして例のあの子と付き合うことになったとか!?」
「ばっ!違うよ!」
「あ〜。そうなんだ〜。それに近いことね。そろそろ狙ってるんだろ。」
「………」
「だよなぁ!お前もそろそろ彼女欲しいもんなぁ!!」
「ま、まぁ…」
蓮くん…
彼女欲しいと思ってるんだ…
もしかして…
今がチャンスなのかな。
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