アマリリス 4




相変わらずバカ。
本当にバカ。
なんで声掛けなかったんだろう。
一生最初で最後だったかもしれない…
もしかしてもうこれで一生恋なんてしないかもしれないのに。


「さくら。お母さん、お父さんとデート♪に行ってくるけど、さくらはどうする?」

母は、ただの買い物のことをデートという。
しかもいつも“♪”付きで。
さくらは溜息を吐き、『行かない』と吐き捨てる。

「えー。今日行くお店、ウェイターさんがすごくかっこよくてさくらに紹介したかったのにな。」

母は私が男の人が苦手だって知っててこんなこと言うのかなぁ!?と思いつつ、溜息を吐く。

「だから行かないってばぁ〜。」
「ふーん。あっ、この前行った時のレシートに担当者が書いてある!えっとー名前は…
舘花…蓮?いや、これって花蓮なの?」
「そんなわけないだろ。それはそれで苗字と名前だよ。男で“花蓮”なんて…」
「そうよねぇ…」

蓮!?
さくらは体をガバッと起こして、大声で叫んだ。

「行くっ!!」



さくらは鏡で全身をチェックする。
スカートは最近買ったグレーのプリーツスカート。
それに白のお嬢っぽいブラウス。

うん。なんとかいい格好してる。
さくらは父の車に乗り込み、そのお店へと向かった。



「いらっしゃいませ。おタバコお吸いになりますか?あっ…」

あっ、と言われて、さくらが顔を上げると、そこに立っていたのは、蓮くんだった。

「あ…」

さくらは例によって笑いかけることなどできず、その場で固まってしまった。

「あら。さくら、この人と知り合いなの?」

母がニーッコリと尋ねる。

「えっと・・・あ・・・」
「バ、バスが一緒なんですよ。」
「あら。そうなの?」

さくらは顔が真っ赤になる。

「う、うん。そう。えっと・・・て、て、て…」

さくらが蓮の顔を見上げると、連は不思議そうに首を傾げていた。

「て、定期入れ…ありがとうございました!!」

言えたー!!
さくらは達成感が嬉しくて、思わず笑顔になってしまう。
蓮も笑顔で「どういたしまして」と言った。


「名前…名前は?」
「お、俺の名前?」

さくらはコクコクと頷く。

「舘花 蓮(たちばな れん)です。佐野…さくらさんですよね?」
「えっ…!?あ…」
「定期に書いてあったから。あ…これからは挨拶くらいは…」
「あ、はい!!」





挨拶…
挨拶♪♪
夢じゃないわよね…?
これは妄想じゃないわよね?
現実なんだ!!

さくらは嬉しさで悶えていた。
何度もニヤーッと笑ってしまう。

今までの人生で、男の人に挨拶すらしたことがないさくら。

明日からは絶対に笑顔で挨拶しよう、と決心する。



さくらはバスに乗り込むと、まず初めに蓮と目が合った。
蓮はどーも、というようにお辞儀をする。
さくらも頭を下げる。

でも。
二人とも笑顔ではない。
さくらも思ったようには笑えない。

さくらが思い描いていたものと少し程遠い感じがした。

さくらは少し淋しくなった。