アマリリス 3




定期入れ…
さくらは鞄の中を全てひっくり返す。
しかし、定期入れは見つからなかった。
さっきバスから降りる時はあったわよね?
バスから降りれたってことは、あったのよ。
てことは…


さくらは今まで来た道と、バス停の周辺を注意深く探してみる。

やっぱりない!!



もしかして…
もしかして、さっき声を掛けられたと思ったのは、このことだったの…?
もしかして…
さっき声を掛けてくれたのは蓮くん…だったの…?

うわぁぁ!!
なんてバカなんだろう!!
また同じ間違いを繰り返してしまった!!
折角…
折角蓮くんと喋るチャンスがあったのに!!


さくらは一人で悶えていた。

こんな私に男の人と話すチャンスをくれた神様に失礼だわ…
普通ならこんなチャンス絶対にないのに…
でも…
またいつものように話すことなんて出来なかったかも…
そう思うと、さくらはまた凹むのであった。



帰りは仕方なく小銭でバスに乗って、次の日の朝、バスに乗るのが嫌だと思うほど、緊張していた。
もし、私の定期入れを蓮くんが持っていたとして…
「あの、これ。」って話しかけられたらどうしよう!?
「ありがとう!」??そして「お礼がしたいから連絡先教えてもらえませんか?」とか!??

どうしよう…どうしよう…

バスが来た。
そして、バスがバス停に止まる。
さくらは整理券を取り、あの人の方を見る。
あの人もこちらを見ていた。
さくらは目を逸らした。

あーーー!!!
バカバカバカバカ!!!
こんな時にやっぱり目を逸らしちゃうのね、私っっ!!!
しかも足が勝手にあの人から遠ざかってるしぃ〜!!


やっぱり私には好きな人に話しかけるなんて無理なのかな…
恋人を作るなんて一生かかっても無理なのかも…



何にも起こらずにバスはいつも通りに終点に着く。
さくらは財布から小銭を準備する。
微かな望み・・・
振り返ってみようかな…
さくらは席を立った。

「あの…昨日定期入れ落としませんでしたか?」

さくらは後ろを振り返る。
そこには蓮くんが立っていた。

「あっ、はっはい!!落としました!!」

なんって不自然な話し方!!
我ながらどもり過ぎだよぅ〜〜!!

「良かった、じゃ、これ。昨日俺が拾ったから…昨日も声掛けたんだけど、
聞こえなかったみたいで。」

そしてニコッと笑う蓮。
さくらは我ながら表情が引きつっている。

「あっありがとうございます!!」
「じゃ。」

蓮は平然とバスを降りようとした。
今…
話しかけないと絶対にもう二度と話すチャンスない!!!
そう思ったさくらはバスを降りて、蓮に話しかけようとした。
しかし。
さくらがバスを降りたときには、蓮の姿はもうどこにもなかった。



また…
好きな人と話す機会を失ってしまった…
さくらは愕然として、一人でトボトボと学校へと向い、歩き始めた。